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【天は赤い河のほとり】短編集

第3章 イルバニ:03│刹那は貴方から始まる


【刹那は貴方から始まる】ドリームside
イルバーニ:婚約者│2(2/2)/4P│5000字
ドリノベ様再投稿用変加筆済
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そんなわたくし達にしか分からないけれども、尊く確かにあった幸せな時間も、ある時期を境に見事に崩れていったのです。

───聖女。

この度に『最高神が皇子殿下に下さった女神』と呼ばれるその人の登場で、状況は大きく変わっていきました。

辺境の部族が近くの町をおそった事件を始まりに、他の国とも戦争が勃発していき、度重なる皇帝陛下の崩御。目粉るしい時代の移り変わりを経て、イルバーニ様の皇子殿下は皇帝におなりになられたのです。


そのような最中にイルバーニ様がお側に控えるのは当然で、渦中におられる彼が多忙になるのも当然で、満足にお姿も拝見することも叶わないままに格段に危険を伴う立場になった彼の無事を願うことしかできずに、年月だけが経っておりました。

(最近ではもう、お父様もわたくしの花嫁姿を見ることを諦めたようですね…)


「お前は………まだイル・バーニ殿を待っているのか」

「ふふ、どうなのでしょうね。ただもう………忘れられているかもしれませんから。イルバーニ様にとって一番大切なのは、昔から皇帝陛下ただお一人ですもの」

「……それでイイのか」

わたくしをただ見つめるお父様はそれはそれはとても悲しげな瞳を湛えております。

(……お父様……………)

『親不孝をしてしまった』と自覚をすれば父に向ける顔がありませんでした。


「あのねお父様………イルバーニ様はわたくしに指一本触れていないのですよ。いつも逃げ道を下さっていたのです。だから、わたくしは、私自身の意思で彼をお待ちしているの………たとえそれが叶わなくとも。これは……わたくしの…生涯唯一のワガママなのです」

熱いものを感じてたまらずに瞳を伏せます。

(彼の名前を口にするだけで、今でも胸が苦しくなるのはなぜなのでしょう)

無言で流れるように優しく包んで下さる腕。そしてわたくしは父の涙を──初めて見ました。

「ごめんなさい……おとうさま…」


変加筆(24/02/17)
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