【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第31章 Final Stage Ⅳ 〜絶望の先に咲く香りの花〜
全てが終わった静寂の中、パチパチと小気味よい拍手の音が響く。
「『こうして、福地桜痴が倒され、因縁を持っていた二人は本当の家族となりました』……本来の筋書きとは違ってしまいましたがいいでしょう」
乾いた拍手を続けながら、聖服に身を包んだ女性が香織達の前に姿を現す。
薄い水色の髪がきらりと揺れた。
「ナーシャ?」
フョードルが驚いたように眉を動かす。
アナスタシアは微笑み、スカートの裾を軽く摘んで優雅に一礼した。
「お久しぶりですね、お兄様」
「お兄様?」
美鈴が目を丸くし、首を小鳥のように傾げる。
「初めてましての方が多いですね、お初にお目にかかります」
アナスタシアはすっと背筋を伸ばし、白い指先を胸元に添えて、深くお辞儀した。
「私わたくしの名前はアナスタシア・ドストエフスカヤ・グラナート、そちらにいるフョードルの妹でございます」
「「フョードルの妹!?」」
敦と美鈴が声を揃え、目を見開く。
(フェージャに妹がいたんだ‥‥)
これには香織も驚いている。
「何故貴女がここに……」
フョードルが低く問いかける。
「物語が終わったからです。と言っても理解しがたいことですが」
アナスタシアは口元に手を添え、小さく笑う。