【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第31章 Final Stage Ⅳ 〜絶望の先に咲く香りの花〜
(援護するにも入る隙がない)
美鈴は遠目に唇を噛む。
敦と芥川が肩を並べ、その先に立つ福地の姿は、膝をつきながらもな刀を握っていた。
血が、福地の口元から落ちる。
敦は荒い息を吐きながら、芥川と目を合わせた。
「芥川……もう一撃だ」
「当然だ……人虎」
銀白の牙と漆黒の闇が、再び地を蹴った。
福地の前で、敦と芥川の二つの影が同時に疾る。
瓦礫を踏み砕く音が重なり、空気が裂ける轟音が響く。
銀白の獣毛と黒衣が渦を巻き、福地を中心に螺旋を描く。
「人虎!」
芥川の羅生門が影から巨大な顎を生み出し、福地の後ろを塞ぐ。
福地は血を吐きながらも刀を振り上げ、二人を睨み据える。
刀身に光が走る。
刃が夜の空気を切り裂く音と同時に、敦の咆哮が響く。
「終わらせるんだ!!」
月下獣の牙が羅生門の黒を纏い、巨大な獣の頭を形作る。
銀白と漆黒の融合体が福地を喰らわんと顎を開く。
「これが……俺たちの!」
「「異能だ!!」」
福地の刃が閃く。
獣の顎と羅生門の牙がぶつかる。
刃と爪、闇と光−−−激突の衝撃が地を砕き、夜空を赤く染める火花が舞う。
福地の軍刀が羅生門の顎を貫こうとするが、敦の獣の爪が刀身を食い止める。
互いの力が拮抗する。
「この一瞬に……全てを!!」
敦の咆哮に芥川が応える。
「貫け!!羅生門!!」
黒衣が蠢き、獣の背から無数の刃が弾丸のように迸る。
福地の刀が折れる音がした。
次の瞬間、『月下獣羅生門』の爪が福地の胸を貫いた。
「っ!!」
獣の咆哮と共に、福地の身体が吹き飛び、地面に叩きつけられる。
闇と銀白の渦が弾け飛び、静寂が戻った。