第5章 《1部/前編4/5話/3P》10 11 12
〈第1章 子供時代編〉【10 さよなら】
〈04/10話│1(2/2)/3P│1400字〉
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(ああ、なんてことを口にしてるんだ、私は)
考えてきたこととはいえ、音に乗せたその言の葉達はすごく冷えきっている。
(今サンジはどんな表情をしているのだろう)
「ロクジュ……?」
出された声は震えていた。そこになんの感情も込もらない、乾いた最後の一言を告げた。
きっと私はありえないくらいに、とても冷たい目をしてることだろう。
「さよなら、にいさま…」
うしろを向いて立ち去るために歩き出した背中にサンジの声が突き刺さる。
狭い通路では反響するのに十分だった。
「ロクジュ………ウソだろ……」
ガシャンと崩れ落ちてもサンジはなおも叫ぶ。
「ロクジュ!!?#ロクジュ───!!!!いや待てよっ、なんで、なんでだっ!?どうしてそんなことを言うんだよ!?………だっておまえ、まいばん、毎晩おれに会いに来てたじゃないか…ロクジュ…」
『ロクジュ、ロクジュ』と私の名を呼ぶ声が悲痛さを滲ませるので耳を塞いでしまいそう。
でもそれすら私にはできなかった。
だって悲痛でもなんでもあの人が私をあんな風に呼ぶのは、きっとこれが最後だろうから。少しでも残しておきたくて、切ない声を涙ぐんで聞いている。
最後の呟きは言葉にならないようなもので私には聞こえない。暗い牢屋の中で寝息を立てて眠っていると思っていた兄が実は起きていて、気配で私に気づき、ずっと様子をうかがっていたなんて夢にも思わなかった。