第9章 忘れられた子どもたち
腕時計を見てれば、もうすぐ二時間が経つ。
買い出しにしてはちょっと遅いかもしれない。
「安原くんが聞き込みをしてみるって言ってたから、それじゃないの?ひょっとしたら夕方までかかるかもよ」
「まさか!お昼を買い出しに行ったんだよ」
「夕方近くまでかかるのかなぁ……」
「アタシに言わないでよ」
何かトラブルでもあったのかな。
そう思いながら腕時計を見たり、火を見たりとしてため息を吐き出す。
「──とにかく、このままじゃ対策の立てようがないってことよね」
「せっかく閉じ込められたんだ。そのうち向こうからなにか仕掛けてくるだろう。焦ることはない」
怖いことをいう。
あたしはナルを少し睨んだ。
「キャンプ場の人達は、幽霊が出るなんて噂聞いたことがないって言ってたのになー」
「まあ……なにか噂があって隠すってのはよくあることだけどね」
「でも、幽霊が出るような心当たりはないって助役さんも言ってたじゃない」
「ひっかけられたのかもしれないな」
「え」
ナルの言葉に驚いたように瞬きを繰り返す。
「助役も秘密にしてくれと言っていただろう。『出る、という噂しかない』と言っていたが、本当のところはどうかな。実際は噂だけじゃなかったかもしれない」
「……本当に、幽霊が出たり祟りがあったってこと?」
「そういうことだ。なにか深刻な問題があった可能性が高いな。だから村長自身が出向いて依頼にやってきた」
「……うん」
「しかし、それを正直に言ってその『問題』が外部に漏れ客足に影響が出ると困る。──それで詳しいことは伏せておく。キャンプ場の職員にも口止めをしておく。まあ、キャンプ場の職員は観光収入で食べているわけだから、自主的に口を噤んだだろうが」
「大人って汚いねぇ……」
「結衣の言う通りだねぇ。……でも、深刻は問題ってなんだと思う?」
「さあな」
深刻と言っても、どれくらいの深刻さなのだろう。
嫌なものじゃなければ良いけどと思っていれば、ナルがゆっくりと立ち上がった。
「ちょっと中を調べてみよう。全員で行くぞ」
「えっ、ここの見張りしなくていいの?」
「用心しておいたほうがいい。絶対一人で離れるな」