第9章 忘れられた子どもたち
「なとんかねえ……」
「ならなかったりして」
「させればいいのよ。幸い、ガラスの無いところから水と食料は差し入れてもらえるし。結構粘れると思うわよ」
「粘れるかなあ……」
そんな事で大丈夫なのだろうか。
なんて思っていればナルが薄く笑っていた。
「問題はぼくらがどのくらい持つかということだな」
「なによそれ」
「相手が何をしかけてくるかわからない。単にぼくらを困らせて喜んでるだけだと思えないんだが?」
ナルの言葉に綾子は不貞腐れたようにしている。
そんな彼女にジョンが苦笑を浮かべた。
「さいですね。なんぞ手を考えへんと」
「──そこの靴箱を廊下に置いてバリケードにする。それと、誰かライターを持ってるか?」
「持ってるわよ」
「幽霊にバリケードが役に立つの?教室の中の方がよくない?」
「廊下にいるよりは安全だと思うよ、教室の方が」
「気休めでもないよりはマシだろう。教室は駄目だ。陽が落ちてからのことを考えておきたい」
「「へ?」」
陽が落ちてからの事……とはなんだ。
そう思いながら麻衣と首を傾げていれば、ナルは『お前たちは馬鹿か』と言いたそうな顔であたし達を見てくる。
「真っ暗な中にいたいか?教室じゃ火がたけないだろう」
「え、あ……」
「あ、そーゆことね。そーか、板張りだもんね」
そうして、あたし達は靴箱でバリケードを作ることになった。
あたしと麻衣はリンさんと共にバリケードする為に、靴箱を迷路のように置いていく。
「天井のほうまでぴったり塞がなくて大丈夫なの?」
「大丈夫です」
「ねえ、リンさん。聞いてもいい?」
「なんでしょう」
「どうして、これで大丈夫なの?」
「悪霊は真っ直ぐにしか進めないという俗信があります。それで門の前や内側にこういう壁を作って、悪霊よけにする風習があるんです。これを影壁や屏風といいます」
「へー……」
「結衣さん、テープを」
リンさんの説明を聞きながら、あたしは紙テープを取り出してからリンさんに手渡す。
「真っ直ぐにしか進めないというのは俗信にすぎませんが、影壁は確かに効果があります。霊にはこれがひとつらなりの壁に見えるらしいので」
リンさんは靴箱に護符を貼り付けた。