第9章 忘れられた子どもたち
たしかに急にかもしれない。
でもずっと思っていたのだ……ナルが閉鎖すると言ったてから、ナルとリンさんのこと何も知らないけどぼーさん達のことも何も知らないなって。
互いの事を知らない。
あまりにも知らなさすぎるのだ。
「ナルやリンさんのこと、あたしはあまり知らないけど……ぼーさんや綾子達のこともあまり知らないってここに来て思ったんだ。互いのこと話さないし、知ろうとしてなかったなあって」
「……ああ、確かになあ。おれら、あまり自分のこと喋らねぇかな」
「でしょ?」
知りたいと思ったことはある。
好きな人のことだ……もちろん、沢山知りたいことはあった。
でも何故か聞かなかった。
拒まれるのが怖いから。
きっとこれが理由なのかもしれない。
「……ぼーさん」
「ん?」
「あたしが、ぼーさんのこと色々知りたいって言ったら……嫌だ?」
恐る恐ると、顔を俯かせながら聞く。
怖くてぼーさんの顔が見れないでいて、やっぱり聞くんじゃなかったと後悔してしまう。
怖いな。
なんて思っていれば、頭の上に手が優しく乗った。
「結衣になら、教えてやるよ」
「え……」
「おれのこと、知りたいって言うならなんでも教えてやる。でもその代わり……」
ぼーさんの顔を見上げると、彼の瞳が月に照らされて光っていた。
その光が昔TVで見た狼のような瞳で、あたしの心臓が強く鳴り響く。
「その代わり、おれは結衣のこと暴く」
「あ、暴く……?」
「隠してぇと思ってることも、全部全部暴いていく。その覚悟があるなら、おれのことなんでも教えてやる」
ぼーさんの手のひらがあたしの頬に触れる。
少しかさついていて、硬い手のひらから伝わる熱に心臓が激しく鳴っていた。
「……全部って……?」
「そうだな……結衣の好きな人間とか……」
ぼーさんの瞳があたしを射抜く。
「おれのこと、どう思ってるか……」
心臓が痛むぐらいに鳴った。
頭がクラクラしてしまいそう……そう思いながら、あたしは慌ててぼーさんから距離を取った。
このままだと、本当に暴かれてしまいそう。
隠していた気持ちとか全部全部。
「きょ、今日はそれはやめておこうかな!じゃ、じゃあ……あたしもう寝るね!お休み!!」
逃げ出すようにあたしは窓を開けて中に入った。