第9章 忘れられた子どもたち
「これはあくまで一つの考え方だな。もっと違う考え方もできる。ここに幽霊が出る。それを目撃した人間はなにか祟りがあるんじゃないかと恐れる。それで風邪をひいてもそれは幽霊のせいになる。そして祟る幽霊談が出来上がる」
「うわーありそう」
「そういう考えになりそうだよねぇ」
幽霊が出れば何でもかんでも幽霊のせいになりそう。
「そうだとすると日本の幽霊が祟って、欧米の幽霊が祟らないのは日本人の精神的な何かに原因があることになってしまう。そんなふうに一旦『人』というフィルターを通してしたうと真実は限りなく屈折してしまうんだ。口から語られる目撃談は誤解や曲解や想像が混沌としていて何が事実なのか分からない。だから幽霊について研究もそのほとんどが目撃談を基礎にしている以上混沌としてしまうんだ」
ナルの説明に誰もが『はー…』と関心してしまう。
やはりナルは説得力のある説明をするな……と思いながら、難しい言葉を理解しようとした。
説得力はあるけれど言葉が難しい。
噛み砕くように理解しようとしながら、脳をフル回転させていく。
「系統だって研究が難しいから色んな人間がやって来て、勝手なことを言う。人間の中には『魂』というものがあって、それが死後も残るのだという意見がある。幽霊とは生きているものと死んでいるものとの間に交わされるテレパシーだという人間もいる。生きるものは観測不能な粒子による『匂い』のようなものを放射していて、死後もその粒子が浮遊して残り、それがある種の人間には幽霊に見えるのだというのもいる」
難しいが何となく理解出来る。
そういう人がいるんだなと少し驚きと戸惑いを抱えながら、ナルの話を大人しく聞く。
「実際、日本で使用される『地縛霊』『浮遊霊』『守護霊』だのは科学的に認められた用語じゃない。誰が使い始めたのか分からないんだ。だから実はその言葉が何を意味するのかはっきりとは分からない。確認する方法がないからだ」
「け、けっこーいいかげんなんだね……」
「出自も意味もはっきりしない。殆ど流行語のような言葉がなんの疑問も持たれず通用してしまう所に、霊に対する研究の難しさがあると思うね」
「……ってことは……なにもわからないの?」
「はっきり言ってやろうか?何一つ分からないし、幽霊が本当に存在するという証拠もない」
