第7章 血ぬられた迷宮
「四度ちょっと。ここらへんの部屋全体的に温度が低めだね」
「肌寒いよね……上着もってくればよかった」
「だねぇ。じゃ、次行こう。えーと、どっちから来たんだっけ?」
「どっちだっけ?安原さん、ぼーさん」
双子がそう尋ねると、法生と安原は二人揃って別方向を指さしていた。
「……どっちやねん」
「……本当に迷子になりそ」
四人で考え込み、こちら側が正しいという場所を歩き出す。
「──ウィンチェスター館だな、これは」
「……ってウィンチェスター銃の?」
「そ。こういう複雑怪奇な家らしいぜ。家が完成したら悪いことが起こるってんで果てしなく増改築を繰り返したってハナシ」
「へぇ。そんなのがあるんだ」
「じゃあ、この家もワケありってこと?」
「でなきゃ、ただのお笑いだよ。お、こっちいるぞ」
法生が開けた扉の先には何とも言えない物があった。
部屋の中に小さな部屋が鎮座してあり、四人はお互いの顔を見合わせる。
「部屋の中に部屋……」
安原はなんの躊躇いもなく中に入っていく。
だが中には特に何も無く、ただの空っぽの部屋であった。
「中はとくにどうってわけじゃないですね」
「ここも温度測る?」
「いいんじゃない?計らなくて」
「ダンジョンならこういう部屋になんかあるんだよな」
「そうそう。宝箱とか小ボスとかね」
男性陣二名はRPGの話で盛り上がっているが、双子は呆れたようにしていた。
すると四人の背後で扉が開く音が聞こえ、双子は思わず肩を跳ねさせる。
「おや、これは……渋谷サイキック・リサーチのかたでしたかな」
部屋に入ってきたのは南心霊調査会の南たちである。
何となく結衣は彼らが胡散臭く思っていたので、なるべく関わりは持ちたくないと思っていた。
そんなことは露知らず、南は結衣と麻衣が手にしているデジタル温度計を目にしていた。
「デジタル温度計……気温の計測ですか。いいですねえ、心霊調査の基本ですよ。霊現象の起こる場所というのは温度が低くなるものなんです。おたくの所長さんはお若いのになかなか物を知ってらっしゃる」
「ど、どうも……」
「あの、南さんもですか?」
「ええ!デイヴィス博士直伝の方法でしてね」