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攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐

第3章 ウソと人魚の心を手放した代償




なのに及川先輩の瞳には私は私として映ってなかった

先輩の中に私はいない






「_____ くるみ?」


映ってなんか…


「どういう…なんで くるみがいるわけ」





゛ でもね、俺 くるみが好きだよ ゛
それだけは嘘じゃなかったから















『…嘘にしてください、全部』





私を映すその瞳が大きく見開かれ息を呑んだのが分かる






  ゛別れてくれませんか ゛

今にも雪が降り出しそうな寒空の下
震えた声で自分の心を殺してそう呟いた

先輩は私を見ず、下に視線をやったまま
「うん、別れよっか」

理由も訳も何一つ尋ねこないでただ一言、
そう言って私達の関係を終わらせた。











『全部、嘘って言ってくれないとわたし…
どうしたらいいのかわかんなくなる…!!
後悔しそうになる、あの時の選択が全部間違ってたって…ねぇ…先ぱ…』

唇を奪われ声も想いも全部及川先輩の舌に溶けていく
唇の隙間から舌を深くねじ込まれ、求められるまま必死に動かす

涙が巻き込まれ広がりしょっぱい味が口内に広がる

甘くて夢のような心地
「はぁ…ん…」及川先輩からたまに漏れる声と吐息に酔いそうになる

現に頭も正常に働かなくて
力が抜けて自ら立つことさえ出来なくなり及川先輩に体を預ける

もう及川先輩とキスしているという事実だけで身悶えておかしくなる
この人が…欲しい…全部…欲しい


『す…き…はぁ…せん…ぱ』






お互いの唇が離れ銀色の糸が垂れ引く
…いつまで…キスしてたんだろ

息が上がって頬が上気させた及川先輩はやっぱり官能的で魅せられてしまう

「はぁ…ヤバっ…だめ…」

普段爽やかでキラキラしてる及川先輩が唯一可愛くなる瞬間
好きだなぁ…そう思いながら眺めてると先輩の手が私の頬に添えられる


及川先輩は困ったように眉を八の字にさせ優しく甘く微笑みかけてくる


「…お前はほんとズルいね
俺が くるみの涙に弱いって知ってたくせにさ…」

先輩を顔を近付けて唇を使い器用に涙の跡をなぞっていく。チュッチュとわざと音を立てながら
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