第1章 Episode 01
その日の夜。調査兵団の分隊長級以上の者が団長室に集められ、会議を行っていた。しばらく実施出来ずに足踏みしていた壁外調査の許可がやっと議会で可決され、その準備と作戦について話し合われていたのだ。当然リヴァイ達も参加するようにとの命令が下された。まだ入団して間もない新兵まで壁外に駆り出さなければならないとは呆れたものだが、いざとなれば壁内に留まるよう言い訳をつくこともできる。リヴァイは決めかねていた。
「_何回やってもダメだ。部屋に置いてないと思った方がいい。」
「え...じゃあどこにあんの?」
「お前、絶対取られたくないもんはどうしてる?」
「決まってるよ。腹巻ん中...あ」
「....」
イザベルとファーランがくだらない会話をしている時も、リヴァイは悩んでいた。きっと、書類はエルヴィン自身がずっと身に持っている可能性が高い。あの厄介そうな女兵士も含め、周りの兵士達が巨人との戦闘に集中している壁外で奴を狙うのが得策だ。ファーランも同じ考えであるだろうが、しかしリヴァイはまだ納得がいかない。壁外の巨人の力は未知数であり、さすがのリヴァイでさえ自分のことで精一杯になるかもしれない。地下街で二人が捕えられた時もそうだった。簡単には二人を危険な死地へと向かわせる決断はできなかった。
「壁外調査を利用する。リヴァイ、それでいいだろ」
「あぁ....だが俺一人でだ」
「はぁ!?なんでだよ、兄貴!臆病風なんてらしくないぜ!!」
「っ...出来ないならこの話は無しだ!!」
「...っリヴァイ!!」
二人を信頼していないわけではない。だがこれ以上何かを失うかもしれない不安をリヴァイは拭い去りたかった。二人が自分を呼び止める声には耳を貸さず、リヴァイはその部屋から立ち去った。