第2章 Episode 00
....確かに、この数年間共に死線を乗り越えてきて、エルヴィンという男を一兵士としては尊敬はしている。もっと近くで、彼の側で兵士としてのあり方を学びたいと思うこともある。しかし異性として好いているかは別だ。彼自身ももうそろそろ昇進の人事が降るかどうかの重要な時期であろう。決して浮ついた感情があるわけじゃない、恋であるはずがないのだ。
「でもエミリー、トーマス達におだてられてる時は面倒臭そうな感じなのに、班長に褒められた時はすごく嬉しそうな顔するじゃない」
「それはっ...!同期と違って、彼は尊敬する上官だし....」
「それにあの気難しそうな班長もエミリーにはよく話しかけにくるじゃない」
「私達はずっと班長の下で働いてるんだから当たり前でしょ。スーザンだってそれは同じじゃない....!」
「そうかなぁー?」
「....そうだよ!!」
エミリーの必死の弁明にに対してスーザンは「ま、そういうことにしておくよ」と返し、次の訓練の準備を始める。それからこの話題が持ち上がることはなく、エミリーはほっと胸を撫で下ろすのであった。