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露花の恋【進撃の巨人】

第1章 Episode 01




「なんだ、てめぇ。そもそも地下で暮らしていた俺達をこんな場所まで連れてきたのはあんただってことを忘れたのか」
「...えぇ、そうだったわね」

いつも遠目から見るエミリーは、他の兵士には笑顔で接し、頼り甲斐のあるように振る舞っている。そんな彼女が思いの外潮らしく話している様子に、リヴァイは少し驚く。

「貴方達の誰かは壁内に残るものだと思っていたわ。まだ入団して時間も経っていないのに...その、助かるわ」
「あぁ。なんだってこの兵団は地下で這いずり回るねずみでさえ欲しいってんだから、余程巨人にやる餌が足りてないらしい」
「...そうね。でもエルヴィンが貴方達をここに引き入れたのは、人が足りてないからじゃない。貴方達には人類の希望になって欲しいの、ただそれだけよ」
「....」

そう言い残すと、彼女は手綱を握り直しその場を後にしようとする。しかしリヴァイはそのままでは行かせない。リヴァイは鋭い目で彼女を引き留めた。

「おい、待て。なぜお前が後方に向かう。エルヴィンの隊にいるお前は前列中央の配置のはずだ。嘘の陣形を俺らに教えたってことか?」

準備の段階で、リヴァイはくまなく陣形や兵士の配置を覚えた。今回この壁外調査で殺すはずのエルヴィンの隊の場所も完璧に頭に入っている。もしその配置の伝達が嘘ならば、リヴァイ達の壁外での行動にも影響が出てしまう。あの男を殺すという意志の強さあまり、リヴァイはその殺意さえエミリーへの言葉に乗せてそう問うた。

「安心して、私は今回所属の隊とは別行動。エルヴィン達は伝達通り前列中央にいるわ」
「....もし嘘なら_」
「嘘じゃない、本当よ。信頼している仲間に嘘の情報なんて渡さないわ」
「....」

真っ直ぐとこちらを射抜く視線に、凛とした表情。リヴァイは彼女が嘘をついているとは思えず、思わず押し黙る。しかし完全に女を信用したわけではない。必要であれば今回の壁外でエルヴィンだけでなく彼女も殺すことになるだろう。リヴァイはその事実を重く心の中にしまい込み、後方へと向かう彼女の後ろ姿を見送った。
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___

「第23回壁外調査を開始する!前進せよ!!」
「「「おぉぉ!!!!」」」

彼らの運命の時がやってきた。初めて目にする遮る壁のない大空。

「....悪くねぇ」

初めての壁外へと、彼らは一歩踏み出した。

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