第5章 𝕆𝕕𝕠𝕟𝕥𝕠𝕘𝕝𝕠𝕤𝕤𝕦𝕞
《 ひかりside》
「もっと密着してぇ…抱き締めてくれ」
轟くんの言葉に驚く余裕が欲しかった。それでも頭の中はすでにぐちゃぐちゃで、私は言われた通り彼の背中に手を回す
本当は聞きたかったの
どうして私に触れるのか
轟くんにとって私はどんな存在なのか
でも聞こうと口を開く前に、情けない音が溢れそうになり口を閉ざすしかない
私は目の前にある轟くんの胸元に顔を埋める
甘い…匂い…
普段は感じないのに何故か今は甘くて酔いそうな気分になる
「…ハッ//」
轟くんの息が少し上がっているような気がする。こうしてくっついてるから分かる…お互いの体温が比例するように徐々に熱を増していってる。
轟くんの手は前に移動して、太ももの付け根を人差し指を立てて焦らすようになぞっていく。私の身体に彼が触れるのは初めての筈なのに、もう何度も触れてきてるみたいだった
慣れてるのかな…
そう思うと胸がチクリと痛み、更に轟くんの胸に顔を押し付ける
なぞり終えると、ショーツに手をかけられ反射的に埋めていた顔を起こす
『…とどろきくんっ…そこ…中…触られてないよ…』
私の声は彼に届いてないのか轟くんの長い指は器用に潜り込みズラそうとしてるのが分かる。自分以外の誰かに下着を触られることなんて今までなかった…
怖いとも思った、けれどそれ以上に溺れたかった
彼がくれる胸が幸せいっぱいになるこの感覚に
「なぁなぁ、あれ轟じゃね?」
「はーー?どこだよって、あり?マジじゃんっ」
その声に聞き覚えがあった
正確に言えば四月からずっと聞いていてすっかり耳に馴染んでいる
轟くんの手はピタリと止まり、ショーツをかけていた手が引き抜かれる。気付けば電車は目的地の駅まで着いていて、同じ制服を着た人がホームに溢れかえっている
「着いたみてぇだな」
轟くんはホームに視線を寄越して、私からサッと身体を離す
まるで何事もなかったみたいに
電車を降りると、やはりそこには峰田くんと上鳴くんが立っていた。けれど二人は口をあんぐりと開け驚愕の表情で立ち尽くしている。轟くんはそんな二人を無視して、改札を抜けていく
登校中、沈んだ気持ちを悟られたくなくて必死に他愛のない話を並べた
さっきはあんなに熱かったのに
今は氷水に浸かっているみたいに寒かった