第4章 𝕂𝕒𝕝𝕒𝕟𝕔𝕙𝕠𝕖 𝕦𝕟𝕚𝕗𝕝𝕠𝕣𝕒
笑って誤魔化してみたけど無駄で
爆豪くんは額にデピコンを繰り出してくる
「おせぇわ、こちとらどんだけ待たされたと思ってンだよ」
過去のフィルターを通して、目の前の彼があの頃の勝己くんに変わる
自信いっぱいで気性が荒いとこもあるけれど隠れた切実な優しさは変わらない
「…てめぇは変わったな、前よりナヨナヨしてンな」
『なよなよって…』
口悪いのは相変わらず
『…いつ私のこと思い出したの…?』
初めて階段場で揉めたとき、爆豪くんは私に気付いてなかった
私と同じようになんらかの違和感を感じていたのは確かだろう
爆豪くんは相変わらず私から視線を外して答える
「忘れてねぇわ、てめェと一緒にすんじゃねェ
確信が得られるまでは知らねぇフリしてただけだわ」
彼によれば、私を追いかけ回してたのも個性を見るためだったそうだ。もちろんあの頃より成長していたからなんの確信も得られなかったと思う。なにより私自身記憶を閉ざしていて、そんな素振りを見せなかったし…
「USJん時、クラス連中の手当してただろ
そんで分かった」
私が訳が分からないと言う風に首を捻ると
爆豪くんは「ん」と唇を尖らせる
先程私が傷を塞いだその血色の良い唇を
『あ!傷!治したから!』
「ちっとは頭働かせろやッ」
お腹の中から何とも言えないものが込み上げて思わず吹き出してしまう
懐かしさ、なのかな。私がクスクスと笑っている間、爆豪くんはこの数日間より幾分穏やかな目で私を眺めていた
『……勝手にいなくなってごめん、ずっと待ってたの?』
笑みが顔から去り、気が引き締まる
待ってないと言われれば寂しくて虚しい
待ってたと言われれば胸が張り裂けるように痛むだろう
私はやっぱり自分勝手で弱いと思う
「待ってねェわ
どうせココに来ればいるって知ってたからな」
余りにも素っ気ないその返事は私の心を満たすのに十分すぎた
…さっき"待たされた"って言ってたのに
きっと私が気負わない言い方に変えてくれたんだろう。爆豪くんに甘えてた自分が覗いてきそうで、胸元の布をギュッと握りしめる
「 ひかり」