第3章 𝔸𝕘𝕒𝕡𝕒𝕟𝕤𝕒𝕤𝕦
轟くんの足元に目線を移すと彼の足元から私を上手く避けて氷の道が出来ていた
安心や恐怖よりも゛また助けてもらった゛
という不甲斐ない気持ちでいっぱいだった
轟くんは今度こそ私の目の前までやってきて
「 秋月 が隙を作ってくれて助かった」
っていうものだから更に胸が締め付けられるように痛んだ
私は無意識にその場にへたり込み、自分が生きていることに実感する
『……とどろきくん…ありがとう
私いつも守られてばかりで…』
私は下から見上げる形で彼を見て言う
すると轟くんは何故か驚いたように視線を返す
私はその表情につい言葉が詰まってしまう
轟くんは無言のまま私の首元にそっと手を置いた
優しく置かれた手は撫でるように動く
『…っ!』
ズキッと彼が触れたところから痛みが走る
すぐにさっきできた傷のことだと分かった。痛みに歪めた顔を轟くんは見逃さず、そっと傷口から手を離した
「…守れてねぇだろ、傷付けさせちまった」
轟くんが悔しそうに苦しそうに顔をしかめるのをみて私は瞬間的に首を何回も何回も横に振った
『ちがう…ちがう、ちがう!轟くんのせいじゃない
私が一人じゃ戦えないからっ、弱いから…』
視界から轟くんの姿が見えなくなり温かい体が私の体を優しく抱き締めた。腰に回された両腕は、まるで割れ物を包むみたいに添えられていて微かに震えていた
「 秋月 だけは危ない目に合わせたくねぇって思った
黒いモヤが現れたときも 秋月のことが一番最初にチラついた」
轟くんの目が見たい
私はゆっくり彼から体を離し、恐る恐る顔を上げる
心のなかに何かがぽっと点火されたような小さな光が揺れて揺れてはっきりと姿を現していく
私の中にある轟くんの存在がどんどん大きくなっていく
「自分でもわからねぇ、けど…
オレの手で守りてぇって思う
秋月 のことオレに守らせてくれ」
彼の負担になることはしたくない
断らないとって頭ではわかっていたのに
私はコクリと本当に小さく頷いた
だって彼の澄んだ瞳が余りにも、燦然と輝いて見えてしまったのだから