第3章 𝔸𝕘𝕒𝕡𝕒𝕟𝕤𝕒𝕤𝕦
玄関口につき加速させていた足を緩める
……私は知ってる、爆豪くんは一度も本気で戦ってない
私が命懸けで逃げてる中彼は常に余裕そうだった
爆豪くんとの差が浮き彫りになって心の中が曇る
「あれぇー?? 秋月 じゃん、まだ学校にいたんだぁ」
「ほんとだ ひかりちゃん、何か用事??」
声を掛けて来たのは三奈ちゃんと透ちゃん
不思議そうに私を見つめたあと、乱れた私の制服を見て二人共納得したようだった
「また爆豪に絡まれてたのか」
「"鬼ごっこ"いつまで続くんだろうねぇ…」
クラスのみんなはこの事態を鬼ごっこと比喩する
私にとっては笑えない例えで、捕まったらある意味本当の終わりだよ…
『もう…疲れたよぉ』
がっくりと肩を落とす私に、二人は顔を見合って苦笑した
二週間耐えただけでも十分すごいと思う
「まあ、爆豪に気に入られてるって事なんじゃん?良かったじゃん!」
「ケンカするほど仲いいって言うしね!」
思っていたような返答は来ず、苦虫を噛み潰したような顔になる
気持ちが少し落ち着いたとき、急に思い出す
『あ、轟くん!轟くんもう帰ったかな??』
沈んでいた私が急に立ち直ったのに驚いたんだろう
二人は目をまんまるにさせ曖昧に答えた
「え、轟??轟ならさっき帰ってたけど…」
『わかった!ありがとう!!またね!』
さっきってことはまだ走れば間に合うかもしれない
二人に手を振り、スクバを抱え駆け出す
先程まで重かった足が嘘のように軽かった
暫く足を動かせば特徴的な髪色が目に入る
あともう少しというところで足音に気付いたのか轟くんが足を止めてこちらへ振り返る
この光景に慣れたのか轟くんはやっぱり立ち止まって私が来るのを待ってくれた
『ハァハァ…ハァー…』
「毎回思うがそんな息切らしてまで走ってくる必要ねぇだろ」
そう言われ少しウッとなる
遠回しに"一緒に帰りたくない"と言われてる気がしたから
そんな意味が籠もってないなんてわかってるけど
不安にならずにはいられなかった
『……轟くんと一緒にっ…帰りたいんだもん』
私は地面を見たまま言った
誤魔化すように『借り返したいから』と付け足した
私だって自分がどうしてここまで彼の隣にいたいのか分からない
ただ安心するの