第10章 𝕘𝕣𝕖𝕖𝕟 𝕧𝕖𝕚𝕝
次に目が覚めたときにはカーテンの隙間から十分に光が差し込んでいて雨は止んでいた。
啓悟くんは起きていて朝食を作ってくれていて「おはよ」とニッコリと笑いかける彼を見てると全部夢だったんじゃないかと錯覚しそうになる。
「シャワー浴びてきたら?」
咲き散らかるキスマはこの布一つ纏っていない体を綺麗に彩っていた。私を一つ二つ頷いて汗ばんでいる体をシャワーで洗い流す。
…あれ
初めてって血が出るものだと思ってたのに。
その辺の知識はわからないけど昔友達にそんなことを教えて貰った気がする。
『…出ない場合もあるのかな』
正直行為をしていたときのことは記憶が飛んでてて曖昧だった。
『次いつ来る?』
「いつでもいいよ。寂しくなったら呼んで?
すぐ駆けつけるから」
含みのある言葉と頭を撫でられ、軽いキスを交わしたあと啓悟くんは先に出ていく。玄関から彼を見送るのは変な気分だった。
私もさっさと支度を済ませて家を後にする。纏った制服がいつもより重く感じられた。
「 ひかりちゃんおはよ〜」
『お茶子ちゃんおはよ〜』
挨拶してそのまま自席まで通り過ぎようと思ったらお茶子ちゃんが「あ、 ひかりちゃん!」と制止する。
「さっきね物間くんが ひかりちゃんを探しにA組まで来とったよ?」
物間くん…?一瞬忘れかけていた名前が徐々に思い出されていく。
『…なんの用だろ?』
「うーん分かんないけど、来たら伝えといてってだけ言われたから詳しい内容は…」
聞いてしまったからには会いに行かなくてはいけない。早いほうがいいと思い、お茶子ちゃんにお礼を言って教室を出る。
「おはよう、 秋月 さん」
背後から聞こえる声に微かに肩が揺れる。振り向けば端正な顔立ちに作り物のような笑いを浮かべる物間くんの姿があった。
「話したいことがあるんだけど
今ちょっといいかな?」
ゆっくり頷くけば、物間くんは私の腕を引いて人気のない空き教室へと連れて行く。