第10章 𝕘𝕣𝕖𝕖𝕟 𝕧𝕖𝕚𝕝
寒い…そう思って寝返りを打つと何かにぶつかる。視界を埋めたのは気持ちよさそうに寝ている啓悟くんの顔で、瞬時に察した。
あぁ、そっか____
胸に絡まっている彼の腕から外れると、密着して汗ばんでいた皮膚に部屋の空気がひんやりと流れてくる。ザーザーと襲いかかるような音に反応し、カーテンへと手を伸ばす。
闇に包まれみんなが眠りに落ちている真夜中。窓には水滴が痛々しく打ち付けられ、ボヤケて何も見えない。やっぱりあのあと雨降ったんだ…
『…あのあと…』
゛けどオレも好きにやるから ゛
体育祭のあの日、轟くんに貰ってほしいと自分から言ったのに。なのに私は別の人に抱かれた。
『…ハハッ…最低…ッ』
ただ轟くんを純粋に好きでいたかった。それ以上望んでいなかったのに。隣で眠る彼に視線を落とす。啓悟くんの事を考えれば罪悪感が少しずつかき消されていく。
目にかかっている柔らかい前髪をどかして、そのおでこにキスを落とす。…前に熱を出したとき寝たフリをしていた私に啓悟くんがおでこにキスしてくれたことがあったけ
「…なーにしてんの」
手を掴まれてもう一方の手で後頭部を鷲掴みにされそのまま強引に唇を奪われる。視界に広がる姿に愛しさが溢れ、胸が溶かされていく。
『…起きてたの?』
「いいや起こされた」
腕を引かれ再び彼の胸の中に収まる。たった一晩で私達の関係が変わった。誰も言葉にはしないけど、素肌から伝わる熱で思い知らされる。
ジワジワといやらしい手で啓悟くんの手が私の背中を撫でる。
「これで二度目」
『?』
「背中の火傷見たの」
「後ろ向いて」と耳元で囁かれ従順に従う。彼の表情は胸を痛めているような切なさと、そしてどこか恍惚としていてうっとしりしてるようにも見えた。
「… ひかりちゃんは嫌がるかもだけど
この跡結構気に入ってんだよねオレ」
チュ、チュッと背中に降り注ぐ無数のキスの雨。擽ったくて身を捩りそうになる。
『…んっ』
「オレがつけた一生消えない跡
見てるだけでゾクゾクするよ…」
唇から舌に差し替わり激しさが増し体が熱を取り戻す。
私だってこの傷に感謝してるっ…
ただの一般人だった私を
ここまで啓悟くんと引き合わせてくれたのだから