第8章 𝕊𝕦𝕟𝕗𝕝𝕠𝕨𝕖𝕣
皮肉言わせてしまって後悔する、流石に来てくれないかと思っていると意外にも彼は私に手を差し出してくる
「別にボクは構わないけどさ急がないと最下位になっちゃうよ?」
彼としっかり目を合わせ、深く頷いてその手を取る
全力で駆けたものの結果は三位に終わり上鳴くんの言う通り微妙な数字に少し悔しかったり…
『ごめんね、走ってもらったのにこんな順位で』
息を整えながら隣の彼に言うと、彼は宙に目を据えて、思案にふけてるいるようだった。それから頭を抱えるような素振りを見せる
「いや別に順位なんてどうでもいいんだよ!
このB組のボクが…!!A組のキミに協力してしまったというのが屈辱的でならない!」
急に豹変してしまった彼にビックリしながらも、そう言えば騎馬戦でも尋常じゃないくらいA組を敵視していたとことを思い出す
…借り物競争とはいえ私から頼んじゃったし…
『ほんとにごめん…でもえっと…キミしか思いつかなくて』
「…もし申し訳ないと思ってるならボクの願いも一つ聞いてくれないかな?」
激情に駆られていた様子から一変して、見極め探るような目で私を見据えてきて、その視線にドキッとする
汗ばんだ体が風に当てられどんどん冷えていく
体の内側から危険信号が鳴ってる
この人は、キケンだと
『…うん、分かった…私に出来る範囲ならね』
その返答に彼は満足したように口元を緩ませ笑みをつくる
…だって私が…巻き込んだんだから、それくらい…
頭でいくら言い聞かせても、取り返しのつかないことを言ってしまったのは拭えなかった
「ありがとね 秋月 さん、すごく助かるよ
ボクのことは物間とでも呼んでよ」
『物間くん…』
「そう」
本心を隠して話す感じが啓悟くんに似てると思わせた
でも違うのはその裏には情ではなく私欲が隠れているところ
早く物間くんから離れようと別方向へ足を向けると
「それとさ、さっきの
何でも持てるけど、何にも持てないものってやつ
あれキミにも当てはまってるんじゃないか?」
「キミはね持ちたくても持てない
だって選べないから」
聞こえてないフリをして足を止めない、そして気付いたら早歩きでその場を去ろうとしていたことに気づく
「体育祭が終わったらまた会いに来るよ」