第7章 𝔸𝕟𝕖𝕞𝕠𝕟𝕖
《 ひかりside》
B組の控え室に戻っていく彼の背中を見送り、A組の控え室のドアを開けるとなんとも言えない微妙な空気が流れてた
……どうしたんだろ…なんかピリついてるというか…
近くにいた響香ちゃんに声を掛けてみる
『ねぇ、なんかあったの…?』
「あぁ、実はさっき轟が緑谷に宣戦布告したんだよ」
宣戦布告…?一瞬単語の意味を忘れそうになる
なんで轟くんが緑谷くんに……?
「なんか轟すごい剣幕でさ、っていうかなんで緑谷なんだろ」
部屋の隅で壁に寄りかかっている彼の姿を見つける
前髪から覗かせる強い意志を秘めた燃え盛るような瞳
…きっとその中には私は入れない
気持ち悪いって思われるかもしれないけど
その意識の中に入りたいと思ってしまう
彼の一部になれる方法があるなら________
「もう入場だー!部屋から出たまえー!」
飯田くんの投げかけにみんなが一斉に動き出す
川の流れのようにみんな同じ場所に流れつこうとする、どこかぎこちなかったり、自信満々だったりと
『……大丈夫大丈夫大丈夫…』
「おいッ」
『ぎゃぁあ!』
声の方向に顔を向けると、勝己くんがいつもの不機嫌面でこちらを見下ろしていた。なんだろ…?と思って、とりあえず目線を見返すとぐっと顔が向かってくる
『…え、ほんと…に何っ』
「シカトかましやがって」
ハッとして握りしめた拳には薄ら汗が滲んでいく。
……そういえば轟くんに話をするなと言われ、啓悟くんにトーク消されてそのままにしとった…
『…勝己くん散々すぎる…』
「誰のせいだと思ってんだよ
つーことは中身見てねぇんだな?」
『…見てないっていうか…』
消されたなんて口が裂けても言えない
首を縦に何度も振る、勝己くんは呆れを通り越してキレ気味で掠れた声で言い放つ
「…オレが優勝したら教室に来い
てめェ一人でな」
『え…果たし状…?』
「ブチ殺す」
へへっと笑うと、勝己くんはケッと視線も向けず私を通り越して進んでいく
ていうか優勝したら…ってなんて自信だろ
でも勝己くんならそれを平気で成し遂げてしまいそうだなんて思うと自ずと口元が綻ぶ