第10章 知らない女の子と五条くん
「……!」
分かったような顔をして、青い瞳はキラリと揺らいだ。
「桃が食べたかったんだろ、あの時みたいに」
五条くんは一度口に含んだスプーンでごろっとした桃を持ち上げ、私の口元…触れるか触れないかまで差し出した。
「当たり?」
「ハズレね」
あの時、桃、食べさせあったこと、何が言いたいのか、何を匂わせたいのか、それら全てを分かった上で
拒絶をしましょうか。
「ゼリーじゃないからって拗ねるなよ」
「問題はそこじゃないのよ」
「何に納得いってないわけ?」
「五条くんの素行に、かしら」
「あー…それはもう直しようがねぇから、とりあえず術式解いてくんねぇ?」
先天的資質を持った五条家きっての逸材であろうとも、私の拒絶は破れない…はず。
「私が食べ終えるまで、ずっとそうしていたら良いわ」
行き場のないスプーンは虚しく空に留まって、側から見れば五条くんは空中にスプーンを突き刺している可笑しな人。
「もう一度言うわね、早く食べないと溶けるわよ」
目の前のスプーンは引っ込む気配が無く、ジャンボパフェのアイスはどろっと雪崩始めた。
言わんこっちゃない…そんなセリフすらも飲み込んで、自分の頼んだパフェを食べ切る……そんな時だった。