第9章 番外編/濡れてないと…
悪友の傑は仕方なく、といった口ぶりだが乗り気であることに違いない。
傑が俺の顔をチラチラ見るのは気になるけど、そんなことを気にしてる余裕はない。
教室から漏れ出る声と俺の予測を照らし合わせる。
『使い始めたばかりだから、まだ馴染まないのよ』
『フィット感が足りない感じ?』
『柔らかいものを選んだのだけれど、カーブが合ってないのかしらね。ちゃんと測ったんだけどね』
使い始めたばかりで馴染まないモノ。
寧々にフィットするモノ。
柔らかくて右曲がりか左曲がりしてるモノ。
ちゃ、ちゃんと測った…ってことは寧々は自分に合う大きさを選んだってことだよな…?
は、測ったのは寧々が自分で…?
とにかく色々調べて買ってそうだな、寧々。
「傑、寧々は硬すぎないのが好きってことで合ってるよな?」
「まぁ、合ってるんじゃないかな」
俺と傑は声のボリュームを最小限に絞って、気配を消しながら寧々と硝子の会話のいく末を見守る。
「いつから使ってるんだ、寧々」
「直近の話みたいだね。それにしても寧々ちゃん、最近雰囲気変わったなって思ってたんだ」