第8章 違う人と任務
「そっか、すまないね。取り込ませてもらうよ」
「ふえっ!?」
夏油くんはなまちゃんの頭を優しく撫でた。
……そして握り潰すように手を閉じる。
なまちゃん…は、一瞬にして黒い塊へと変化し、手乗りサイズはそのままに
夏油くんの喉元へと落ちていく。
「傑、ナマ…」「夏油くん、なまちゃん…」
これは…なまちゃんがまたひとりぼっちにならない為の、悪意を持った人間の手に渡さない為にも
必要なこと。
なまちゃんの本来の姿が大鯰だからとか、泥臭いとか生臭いとか、そんなのを抜きにしても
美味しくはないものを腹に迎え入れる行為というのは、見ていて辛い。
取り込まれていくなまちゃんに対しても、一時的に申し訳ないとすら思う。
「…うん、ちゃんと取り込めたよ。出ておいで、なまちゃん」
夏油くんの体内に取り込まれたなまちゃん。
術式によって使役される呪霊として顕現したなまちゃんは…
「本当に食べられてしまうのかと驚いたが、まさかな。それよりも主の腹の中は心地好い」
「「えっ…!?」」
手のひらほどの大きさだったのが、嘘のよう。
白い体は細く長く、長いヒゲはより長く、龍にも見劣らない姿をしていた。