第8章 違う人と任務
「なま!俺の寧々に触んな!」
「えへ、やーだよ」
20メートル先の五条くんが頬ずりをするなまちゃんに吠えている。
「おい!傑!離せって!」
嫉妬心剥き出しで、今すぐ私となまちゃんの間に割って入ろうとする五条くん。
「ふふ、お断りするよ」
鬼役の夏油くんは、五条くんの手を離すことなく掴み続けた。
リードを引っ張って逃げ出そうとする大型犬と、にこやかに制止する飼い主みたい。
「なんで離さねーんだ、傑!」
「私だって嫉妬するさ」
嫉妬に駆られた狂犬を、これまた何故か嫉妬しているらしい飼い主が宥める。
「寧々おねえちゃん、すりすりー」
「あいつ…!ローターみたいに動きやがって!俺と違って傑は何に嫉妬してんだよ!」
「うーん…強いていうなら、悟にかな」
「えっ…、俺のこと好きなの…?」
私がなまちゃんと戯れている間、あっちはあっちで親友同士の友情とは違う何かが芽生えそうだった。
「とにかく、だ。寧々ちゃんのところにはいかせないよ」
「よく見ろって!寧々の手、なまのローションまみれなんだぞ!」