第15章 ダブリスの獣たち
「……ブラッドレイ、大総統……」
「何をしている、アームストロング少佐。アールシャナ中尉」
勢いよく大総統が刀を抜くと、ドルチェットさんはその場に倒れ込んだ。
灰色の地面が真っ赤に染まっていく。
込み上げてくる感情を必死に抑えるが、無意識に眉間に皺が寄ってしまった。
ロアさんが、怒りに満ちた表情で大総統に向かって攻撃をするが、一瞬にして斬られ、ドルチェットさんと同じくその場に倒れてしまった。
大総統は、私に近づくと、
「私は目標以外は全てなぎはらえと命令したはずだ。敵に情けをかけるな。いつからそんな甘い人間になったのかね、アールシャナ中尉」
返す言葉もなかった。
命令違反だと問われ、処罰を受けてもおかしくないことをしたのだから。
私は唇を噛み締め、「申し訳ありません」と頭を下げることしかできなかった。
ここに来てから、私はずっと迷ってばかりだ。
こんなこと、以前の私にはなかったのに。
雪女としての私。
軍人としての私。
大人としての私。
一人の人間としての私。
死ぬこと。
生きること。
ずっとそれらが心の中でせめぎ合っている。
何が正しくて、何が間違いなんだろう。
私が選ぶ選択は、どれなんだろう。
正しくありたいのに。
正しくいられない。
「………くそっ」
どうしようもない感情が短い言葉と一緒に漏れ出た。
そして、我に返り少しだけ冷静さを取り戻す。
今はまだ、答えなんてなにひとつ何もわかっていないけど。
もし、この場での正しさがあるとしたら、正しさを選択できるとしたら……。
「エドワードくん……!!アルフォンスくん……!!」
私は静かに前を向いて、地下2階へと駆けだした。