第8章 因果呪縛を解く
「あまり自分のことを話さない方がいいよ、特に私みたいな情報屋にはね」
「知られたところで別に咎めないわよ。昔から呪詛師に狙われているからね、その界隈には既に知られているわ」
「ふふっ、そうか。ではここからは私がやろう」
「何を?」
「襲撃者達へのお咎めさ。私は情報を脅し取ろうとする人間には厳しくてね」
「私が尾けられていたかもしれないのだけど」
情報屋が首を横に振る。
「いいや、違う。コイツらは私の競合相手が雇った呪詛師だ。最近つけ狙われていたからちょうどいい機会だと思ってわざとこの場所の情報を流していた」
「……最初からこの状況は想定済みだったってこと?」
「君が引き返してきたのは想定外だったけどね」
情報屋は長椅子から立ち上がり、祭壇で呻くスキンヘッド男の方にツカツカと歩いていく。
「1つ忠告しておこう。君みたいな優しい人間はこういう世界に向いてない」
「お気遣いありがとう。でも心配には及ばないわ。もうこれきりのつもりだもの」
「そうか、それはそれで少し残念だ。……では、もし“次”があったら、ぜひともご贔屓に」
「はい?」
次の瞬間膨大な呪力が放たれ、大きな爆発音が響き、教会全体を揺らした。
爆心は情報屋の身体、自爆したのだ。
爆発寸前に教会の扉を突き破って外に避難した伽那夛の足元にガラスの破片と一緒に手のような形の何かが吹き飛んでくる。
「……成程、最初から本人ではなかったという訳ね」
自爆して飛び散った情報屋の破片はプラスチックのような硬質な素材だった。
今回は最初からこのつもりだったようだが、情報屋ということを考えると客と会う時はいつも人形なのかもしれない。
「というか、これ、私のせいにされるのかしら?」
扉とすべての窓が吹き飛んだ教会を眺めて、思わず伽那夛は呟いた。
濡れ衣で爆弾魔にされては堪らない。
とりあえずスキンヘッド男よりも幾分かダメージが少なそうな茶髪男の携帯電話を拝借し、救急車を呼んでおいた。