第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「萩さんは何が喜ぶかなぁ? 」
「乾燥の山菜がありますよ。お菓子も買いましょう!お煎餅も」
「お餅もあるね!よもぎだよ、緑色だも〜ん」
帰り道の途中にある、道の駅のような土産物屋にいる。休憩とお買い物で立ち寄った。
地元の食材や菓子折りなど、目移りする様なお土産の品々が並ぶ店内を歩いて、皆へのお土産を物色するのに忙しい。
千寿郎は、狭霧山の周辺で採れた蓬が練り込まれた餅菓子の箱を、両手に重ねて持っている。知り合いに配るため、買い忘れのないよう、あげる人の名前をぶつぶつと呟きながら歩いている。
「千寿郎、父上は何を喜ばれるだろうな! 」
真剣に考えていたら、兄に声をかけられた。
「沢山買っているな。俺が持っておこう! 」
「あっ、ありがとうございます兄上」
千寿郎の視界を遮るほどに高く積まれ、ずっしりとした和菓子の箱の重みが、スッと消え軽くなった。
「父上は、前にお土産で可愛い花を買って来た事がありましたね」
「ああ!覚えている。確か、鬱金香だった。母上に供えておられたのを見たな」
「そうでしたね。桃色と、赤い花がきれいでした」
この土産物屋の店頭にも、同じような花が並んでいる。それが目にとまり、二人の中にあった記憶が呼び起こされた。
「懐かしいな。買って行くか」
「はい!桃色が可愛いです! 」
向こうでお茶を選んでいたひなたがやって来た。
「わあ!可愛いチューリップだね!!私も欲しい! 」
「ひなたも鬱金香が好きか! 」
「え?うっこん⁈って何」
何鉢か並んでいるチューリップの花、とても可愛いけど不思議だ。呼び方が違う。
「チューリップじゃないの? 」
「む? 」
杏寿郎も千寿郎も初耳、という顔をしている。
…きっと昔の人は、そう呼んでいたんだな…。
昔と現代とでは、呼び方の違う言葉がある事を、この時代にきてからひなたは何度か経験していた。
ひなたが驚いたのはそこじゃなくて、春から5月が最盛期のはずのチューリップが、なぜ夏にあるのだろう。
「ねぇ、うっこん、の季節って春じゃなかった? 」
不思議そうなひなたが、聞いたままの名前を適当に言っているのが分かり、千寿郎は少し笑いそうになった。
「ひなたさん、鬱金香ですぅ」