第34章 天女のノート ーお狐さまと未来から来た天然姫ー 【光秀】
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「まさか、これほどまでに奇想天外な話だったとは。にわかには信じがたい…」
「ですよね…」
「だが、それならすべて合点がいく。お前の挙動不審さ、それに、あまりに能天気で危なっかしいのに、よく今まで生きてこれたと不思議でたまらなかったが、戦のない世で生まれ育ったというのなら納得だ。俺は信じるぞ、名無し」
点と点が線でつながり、違和感の正体がわかった光秀は満足で、
「ひどいな。言いたい放題ですね、否定はできないけど」
そう言って唇をつき出してむくれる名無しの顔も可愛くてたまらない。
(平和で良い時代なのだろうな、未来は)
名無しの素直さを見ていると、そんな風に思えてくる。
「安心しろ。他言はしない」
「はい。お願いします。では、秘密を明かしたので、ノートを渡してもらえますか?」
「ああ、これはお前が未来に帰るために必要なんだったな」
光秀は懐から帳面を取り出す。
「ありがとうございます!」
嬉しそうに手を伸ばした名無しを見やりながら、サッと後ろに隠した。
「え?」
「渡してやらんこともない、とは言ったが、すぐに、とは言ってない」
(これを渡せば、未来に帰ってしまうのだろう。それは嫌だ。帰したくはない)
「ええー!そんなのズルいです!」
「隙をついて奪い取ってもいいぞ」
「隙なんて全然ないのに、無理に決まってるじゃないですか!」
帳面を奪おうと、必死で後ろに回り込もうとする名無しを易易といなす。
それも愉快でたまらなかった。