第10章 *File.10*(R18)
「もしかして、諸伏さんは知らなかったの?」
「まあね」
「そう、なの?」
「ああ」
だから、雪乃の心配は要らない。と、言い切ったのか。
風見さん絡みの話かと思っていたよ、今の今まで。
彼に雪乃のことを任せていたのは、オレも同じだった、けど。
「……」
オレに向けるコナン君の目が酷く同情を表していて、嬉しいのやら、悲しいのやら。
「雪乃さん」
「なーにー?」
「まだ聞いてない」
「あ〜、その話ねー」
あれから組織の件で急にバタバタし始めたから、それどころではなくなった。
「まだ、聞きたい?」
「当たり前だよ」
「当たり前、なんだ?」
オレを見上げた雪乃が、嬉しそうに笑う。
「この話の詳細は、君が退院してから、だな」
「…此処では?」
「それは無理だ」
「!」
オレがハッキリと断ってゆっくりと首を振れば、コナン君は驚いた顔で雪乃を見つめた。
「…そこまで?」
「うん、ごめんね。だけど、コナン君がまだ知りたいと思ってくれるなら、全部話すよ」
「…絶対?」
「もちろん。約束する」
「諸伏さんも、異論はない?」
「オレ達はみんな、雪乃の意見に反対はしないよ。この件に関してだけはね」
「…景光?」
「ん?」
「今、サラッと、すっげえ余計な一言付け加えなかった?」
「オレは本当のことしか言わないし、雪乃の方こそ、何か心当たりがあるのか?」
「ムムッ」
「くくくっ」
素知らぬ顔をして応えれば、上目遣いで睨んで来る。
その表情も、オレには可愛いだけ、なんだけど?
「仲良しこよし、なんだ?」
「それはまあ、ね?」
「ああ」
「安室さんとみたいに、諸伏さんとは口喧嘩はしないんだね」
「…口、喧嘩?」
「ポアロでしてたよ。初対面のあの時に」
「…へえ」
「だから最初、雪乃さんは、安室さんの彼女かと思ったんだ」
「…何処に行くつもり?」
ゼロの彼女、ね。
「お、御手洗?」
「此処に来る前に行ったはず、だけど」
気配が僅かに動いたから、伸ばした指先で雪乃の腕を掴んだ。
「そう、だったっけ?」
「次の客人も来たみたいだから、オレ達は戻るよ」
「…バラ、貰って行くね!」
「う、うん」
腕は掴んだまま、気まずそうにするコナン君の病室を後にした。