第47章 水柱・冨岡義勇
竹林がびっしりと両脇を占める道を一人の男が歩いている。
右手に大きな風呂敷を持つのは杏寿郎だ。
「(うむ! 見事な竹だ。歩くのも良し、鍛錬にも良しと言った所だな)」
スタスタと軽やかに歩く彼の胸中は非常に楽しそうだ。炎柱が向かっているのは水柱・冨岡義勇の屋敷である。
「冨岡! 頼む!」
「やらない、他をあたれ」
「冨岡! さつまいもご飯を一緒に食べよう」
「いらない、他の奴と食べろ」
「冨岡!! 鮭大根を一緒に食べに行こう」
「…承知した。店はどこだ」
三度のやりとりがあった後、杏寿郎は義勇とどうしてもやりたい事にたどり着いた。
それは彼との手合わせである。
「おはよう、冨岡! 朝からすまんな!」
「…おはよう、お前はいつも元気だな」
「君との勝負を楽しみにしていたのだ。しっかり朝食も食べて来たぞ!」
普段もきっと朝からたくさん食べるのだろうな、と義勇は思う。
自身は低血圧の為かどうにも朝は強くない故、水柱の朝食の量はそう多くはない。
屋敷に入るよう促した水柱は静かに杏寿郎の先を歩く。その間も炎柱の言葉は途切れる事がない。風呂敷を屋内に置いた事を確認した義勇は、再び杏寿郎の先を歩いていく。
「素晴らしい竹林だな! とても心が洗われた!」
「そうか」
「先日共に食べた鮭大根は絶品だったな! 今度は七瀬とも行ってみようと考えている」
「そうか」
「今度はさつまいもご飯を君と食べたいのだが」
「お前が勝ったら……検討する」
【行かない】と断られると思っていた杏寿郎だが、これは嬉しい驚きだった。義勇との勝負を楽しみにして来た彼の気合いがますます入る。
それから持っている木刀を一度ギュッと握り込む炎柱だ。
「着いたのか?」
「ああ、何本にするんだ」
「一本で構わない! 君も忙しいだろう」
「承知した」
ピタッと足を止めた義勇は後ろを振り向いた後、静かに木刀を構える。
「(煉獄と手合わせ出来るとは思わなかった…)」
どうやら水柱も杏寿郎と勝負をしてみたかったようだ。