第28章 今宵はふたりで Ⅱ【P273〜の続き、🤍&🐾 ♟️*】
「はぁ、………静かにしてくれないか」
呆れたような声音にキッとその瞳を睨み付ける。
その視線の先で、フェリスは歪んだ微笑を浮かべた。
「君も君だよ。どうして、この僕よりあんな下賤なんだ?」
その言葉の後重なった唇に、思い切り歯を立てる。
「っ………!」
反射的に唇を解いた彼に、白魚のような指が空を切る。
パンッ。頬を張った音が薄闇に包まれた室内に響いた。
その直後、じわじわとフェリスの口角が上がる。
「っく………はははははっ……!」
嗤うように、心から蔑むように。
この上なく滑稽だと言うように嗤い続けるフェリスに、彼女が怯む。
ややあって笑みを収めた彼は、ヴァリスに向かって再度その指を伸ばす。
「そうか。………そんなに厭なら、」
「厭あああぁッ」
と、その時、慌ただしい複数人の靴の音が近づいてくる。
「主様!」
バン!と乱暴に扉がひらかれ、突入して来たいくつもの影。
ルカスの背後には青い顔をした伯爵家に仕える家令、
数名の、あちこちがツギハギだらけでぼろぼろのドレス姿の少女たち、
そして四人のグロバナー家の近衛兵の姿もあり、フェリスが眼の色を変貌る。