第6章 デートの練習
悔しかっただろうな。
まるで虫けらでも扱うように、人が人ではないものに改造されていて、最強呪術師である五条悟の真ん前で、次から次へと命が消されていくことが。
五条先生は冷酷さを持ち合わせてる人だけど、冷徹な人ってわけじゃない。
真人によって改造された人間が一般人を襲い、人々は逃げ惑う。叫び声はまさに阿鼻叫喚で、助けてってすがる声や、キャーって泣き叫ぶ恐怖の声が耳をつんざく。
あっという間にホームは血まみれの人間で溢れかえり、駅構内の柱や壁はみるみるうちに鮮血に染まる。
吹き抜けの天井から人が次々と投入されて、真人に無為転変され、最強がそこに居ても、ものすごいスピードで死者の数が増えていく。――
あの時、五条先生は立ち尽くしていたけど、茫然としていたわけじゃなく、内心、激しく憤っていたんだろうと思う。だからこそ決断した一か八かの領域展開……。
「千愛ー?」
「え、あ、なに?」
「なんか泣きそうになってない?」
「……へ?」
そんな顔してたかなと慌てて両頬を手でぐっと持ち上げた。感情移入しすぎちゃってたかもしれない。私が暗くなってどうする。