第6章 デートの練習
私の手首は見えない糸で吊るされたかのように上に引っ張りあがり、手を重ね合わせようとした。だけどその前に指先がぎゅっと縮こまってしまう。
別にこんなの難しい事でも何でもない。幼稚園児に笑われるレベルだ。すぐそこにある五条先生の手にそっと触れればいいだけ。そしたら握ってくれる。
それはわかっているけれど私の手はそれ以上進まず、結局出しかけた手をひっこめた。
「どしたの?」
「大丈夫。ちゃんとはぐれないよう歩くから」
「なんで? デートするなら手くらい繋がない?」
そんなにためらう事? って顔してる。そうだよね。朝っぱらから勝負下着の話なんてしておいて今更だよね。
それにこれはデートの練習なわけだし、こういうシチュエーションも想定して五条先生は手を出してくれたのだろう。
私だって男の人と手も繋げないほどウブじゃないし、そういう自分を演出してるわけでもない。
この手を取って繋いで歩いたら、大きな手に包まれて冬のデートでもあったかいんだろうなぁと思う。
だけど、手を繋ぐって行為は、なんていうかもっと自然なもののような気がして……。
例えるなら、引力みたいな、磁石がくっつくみたいな感じ。目には見えないけど互いの気持ちが引き寄せられて、その結果、触れ合う箇所が手なんじゃないかって。理由はただそれだけ。