第35章 約束
せっかく音柱のおっさんのことを不憫に思っていたと言うのにそれは杞憂に終わった。
思い通りにいかないほの花とのことの八つ当たりをするかのように俺たちに向かって指をさすと信じられないことを言ってきた。
「いいか?俺は神だ!お前らは塵だ!まず最初はそのことをしっかり頭に叩き込め‼︎ねじ込め‼︎俺が犬になれと言ったら犬になり、猿になれと言ったら猿になれ‼︎猫背で揉み手をしながら俺の機嫌を常に伺い全身全霊でへつらうのだ‼︎」
いやいやいや、それ絶対に八つ当たりでしょ⁈
ほの花が言うこと聞かないからって俺たちに向かって望むことは絶対服従の主従関係だ。
ほの花に求められないからと言って此処まではっきりと包み隠さずに言ってのける奴もなかなかいない。
この際だからはっきり言おう。
(…こんな奴のどこが良かったんだ?ほの花は)
もちろん面と向かっては言えやしないので、心の中ではっきりときっちりと言葉にしてやった。
「そしてもう一度言う‼︎俺は神だ‼︎」
何回も言うなよ。
神とか仏とかどっちにしてもそんなこと言う奴がヤバいってことは既定路線なんだ。
とんでもないヤバいやつだと言うことだけが分かったところで隣にいた炭治郎が何故か手を上げ出した。
おいおい、変なこと言うなよ?
こう言うやつとは極力関わらないに限るんだ。
記憶がないくせに継子のほの花の後をつけて鰻屋についてくるような男だぞ?
しかし、炭治郎に心の中でいくら願っても他人の心など変えられるわけがない。
「具体的には何を掌る神ですか?」
「いい質問だ、お前は見込みがある‼︎」
(いや、阿呆の質問だよ。見込みなしだろ)
唯一ほの花だけが変な顔をしてそのおっさんを見ていて同じように顔を引き攣らせていた俺と目があって頷き合った。
(ああ、良かった。ほの花だけは常識人だ。)
しかし、俺たちの辛辣な視線をモノともせずにそのおっさんは阿呆なことを延々と言い続けた。
「派手を司る神、祭りの神だ」
同じようにほの花も呆れているかと思いきや、そのおっさんの言葉に少しだけ悲しそうに笑った。