第1章 はじまりの夜
マリスを抱いて自室へと戻りながら、ヴァリスは母の記憶を反芻する。
みずからの起源と称される程に、母リラに生き写しのこの容姿。
「………っ」
最後にリラと過ごしたあの日の記憶を繙きながら、生前の母の姿を思い返した。
(母さん……。)
雪のように白い肌、ボブカットに切りそろえた銀の髪に白青色のインナーカラーの入った髪、
紅い血汐を透かした唇、知性と感情の炎を宿した紺碧色の瞳………。
(でも、どうして………、)
私を見つめる度に、何処か怯えたような眼をしていたんだろう……。
私以外の人と接する時は、よく微笑う、表情の豊かな人だったのに………。
その理由をひもとこうと、思考を覆っている混沌を追っているうちに、
ふと気づけば自室の扉の前に来ていた。