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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第3章 捻れた現実


「主様………、」

アモンの声を、軽く手を上げることで封じる。



「本当に大丈夫なの」

笑みに染める唇。

それでもその声音に滲ませた、したたかな意思が、ヴァリスの心の内を示していた。



「「………………。」」

そっと見つめてくる、アモンのスピネルの瞳と、

ラムリのグリーントルマリンの瞳。



問うような視線を向けられ、その唇に笑みをのせた。



「ある——、」

その声をかき消すように、カタン、と馬車が止まる。



「着いたみたいだね。いこう……ふたりとも」

そう言って、花のように微笑う。

その表情をみて、これ以上の詮索は野暮だと悟ったようで。



「はい」

アモンの指につかまりながら馬車から降り立つと、

周囲の人々の視線から守るように、華奢なその身を隠すふたり。



「おい、あの女って……。」



「あぁ、奴らの『主様』だ………。」

ひそ、ひそ、………ひそ、ひそ。

街の人々の囁きは、彼女の耳にも届いていた。



「こんにちは、いい天気ですね」

その声さえも覆うように、微笑いかける。

その表情に、さざめくような声がピタリと止んだ。



「主様、いきたい所はないっすか?」

悪戯に微笑いかけられると、その瞳を好奇心に煌めかせる。




「貴方たちの好きな店をみて回りたいかな」

心から口にした言葉は予測できなかったようで、ぱちりと瞬く瞳。



………そして、やや遅れてその頬に朱を散らした。




「主様、そんなんでいいんすか?」

少しぎこちない笑みのまま、そう問いかける。

そんなアモンに、ヴァリスは笑みを深めた。




「うん、貴方たちを知りたいの。だから………つれていって」

そう言って、微笑んで見せる。

微笑を描く唇に、心からそう願っているのだと悟ったようで。




「了解っす。じゃあ……ラムリ、」




「うん! まずはボクがご案内しますね!」

キラキラと瞳を煌めかせて、そっと手を引く彼。

そのさまに微笑みながら、足音を進めた。
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