• テキストサイズ

焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第3章 捻れた現実


一通り屋敷内の案内を終え、ヴァリスは自室へと戻っていた。

指輪に触れながら、彼らのことについて思考に載せる。



(皆は、)

どうして、あんなにも私を支えようとしてくれるのだろう。



あんなさまを見ておいて、気にならない筈がないのに、

それでも聴かないでいてくれた彼らの優しさに、張り詰めていた心が解けた。



(さっきは、本当に嬉しかった)

胸のなかを温かさが満たす一方で、染みのように広がる感情。



(私なんかが、許されるの?)

唇をかむ。

幾年も経た今でも錆が拡がっていくように彼女の内を蝕む、父の言い放った言葉。



『おまえは人に不幸しか招かないな』



(父さん、………母さん)

心で呼びかける。



(『許して』なんて、言わないから。

だからせめて、いまこの時だけは………、)

祈るのは許されたいからじゃない。いまでもふたりを、大切に思っているからだよ。



組み合わせた指先。何度も、何度も祈りを捧げていると。

ふいに叩扉の音をとらえて、ヴァリスは扉を振り返った。
/ 186ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp