第3章 捻れた現実
何処か稚く見える執事のほうは梅紫色のアシンメトリーショートカットに切り揃え、
左後頭部付近で腰の辺りまで長く伸びた髪を編み込んで、
その左耳には木賊(とくさ)色の宝石の付いたペンデュラムピアスが揺れている。
白と蠟色の七分丈に捲り上げた袖と胸元には包帯がちらりと見え、
ゆるく胸元に留られた黒のネクタイちは金色の鈴が付いている。
少年のように細い左肩には猩々緋色のショルダーストラップを装着し、
右肩のそれは肩には付けず、
紅のツギハギ柄のステッチモチーフの
刺繍がほどこされたサルエルパンツの上に垂らしている。
脚衣にはダメージ加工調の黒のテイルが縫い付けられ、
それに黒のアッパー部分と赤のアウトソールが
印象的な厚底レースアップブーツを履いていた。
トレーニング室で模擬戦をしていたのはラトとハウレスだった。
彼女をみて、わずかに瞳をゆらめかせるラト。
セレスティンの何処か淀んだ瞳は、彼女だけをとらえていた。
「どうしたの?」
穏やかに見つめる瞳に笑みを返す。
「貴女は、私が怖くないのですね」
「ラト!」
鋭い声で名を呼んだのはハウレスだった。
「構わないから」と手で制しながら唇をひらく。
「うん……怖くないよ」
それは心からのものだった。その反応は予想外らしく、三組の瞳が僅かに揺れる。
「私………ね、どんな人でも外見だけで判断しないことにしているの。
だから怖くないよ」
そう言って微笑って見せた。
柔らかく解けたその眼差しに、ラトはこちらへと指を伸ばしてくる。
「ミヤジ先生の言っていた通りの方ですね、貴女は………。」
微笑んだラトは、さらりとした髪を指先に絡める。
ほのかな匂いのする髪をもてあそばれていると、ハウレスがふたりを引き離した。