第3章 捻れた現実
シッティングルームを後にし、コツ、コツ……とふたたび響く足音。
ベリアンの先導で廊下を進んだ。
「主様、足元にお気をつけください」
階段を上がるのに手を貸すベリアン。
重ねた指は手袋越しでもその温もりが伝う程温かく、そして力強かった。
「ありがとう」
そっと微笑む。そして2階へと上がると、かすかに耳をかすめたのは。
かん、かん、………きんっ。それは、刃同士がぶつかる高い音だった。
その音がする扉を控えめに叩くベリアン。
「今、主様を屋敷内の各部屋へご案内しているのです。入っても宜しいでしょうか?」
「どうぞ」
「失礼いたします」
静かな靴の音が室内へと進む。
ヴァリスの纏う稀有なる彩色に、室内にいた二人の執事の瞳が僅かに瞠目する。
けれどそれは一瞬のことで、すぐにその感情の光は消え去った。
「主様……!」
シャツの腹をはだけさせて、汗を拭っていたハウレスが慌ててかき合せる。
アシメショートカットに切りそろえた髪に、
サイドバンク(片側に流した長めの前髪)を組み合わせた髪型をしており、
その髪の狭間からは紅いラブラドライトの瞳がのぞいている。
左の頭頂部付近の髪を後ろに撫で付け、
右耳に青緑色と[#ruby=韓紅_からくれない#]色のグラデーションカラーのクロスチャームのチェーンピアスを付けている。
シャツの襟には黒と白のストライプ柄が入り、
黒曜のジャケットには蔓草のエイブロダリー(刺繍)装飾と、
その胸元にはアギュレット(太い飾り紐)。
瞳の色と同系色の飾り釦はフロッグ(釦を留める紐)で留められ、
テイル部分には黒と紅の菱格子模様が入っており、
金のバングルに彩られた黒い脚衣に、金茶色のスタッズとアウトソール
(地面に接する靴底の外側部分)が印象的な黒のジッパーブーツを合わせていた。