第2章 主人として
「ごきげんよう、主様」
薄い唇に笑みを描く。ゆるく波うつパリスグリーンの
巻き毛のセンターパートショートカットの髪の狭間からのぞく双眸は、
右目がラピスラズリのような紺碧色、左目が辰砂のような紅と互い違いの色彩で、
その両の眼の下には頬に向けて伸びる痣があり、
左頬部分には頬に向かって付けられた古傷が刻まれている。
純白のクラバットを合わせたシャツの袖口には華やかなカフスがほどこされ、
その胸元にはハーネスベルトを締めている。
その上には裏地に金糸で菱格子(菱形(ダイヤ形)が
連続して並ぶ模様)柄の入ったショルダーケープ付きのロングコートで、
その裏地にちょうど腰の辺りに、
燕尾服のテイル部分のように垂らされた青藤色のテイルが縫い付けられている。
腰には金の鍵束がくくり付けられたベルトで締めた脚衣を着用し、
その足元はヒールブーツで、彼が歩く度にコツ……と床を密やかに打ち鳴らした。
「ラムリくん、………それにナックくん」
「なにをしていたの?」
微笑みを返しつつ問うと、ラムリの瞳が悪戯っぽく煌めいた。
「チェスです。………あ、そうだ!
主様ぁ、一緒にナックをこてんぱんにしちゃいましょう♪」
腕を取った彼が笑う。
突然触れあった手に戸惑ってると、ナックがふたりを引き離した。
「こらラムリ、主様を困らせてはいけません」
途端に、大きなグリーントルマリンの瞳が不快さに淀む。
「はぁ? 勝ち逃げなんて、ボクが許すと思う?」
怒ったように、少し見下しているように。
不愉快そうに見やる眼差しに、彼もまた棘を宿した。
「人聞きの悪いですね。——そもそも、
主様を楽しませたいからと、私に教えてほしいと言ってきたのは貴方でしょう」
「ちょっ……なんでバラすのさ!?」
怒るラムリの頬が、ほんのりと染まっている。
「そもそも、いつだって貴方は————。」
「ふふ………っ」
白熱する応酬に、思わず笑みが零れた。
そのままくすくすと笑っていると、怒りを鎮めたナックが呟く。