第2章 主人として
「どうぞ、主様」
ベリアンに椅子を引かれ、「ありがとう」と掛ける。
「今日は白パンと野菜スープ、トマトサラダとプディングをご用意しました」
『お口に合うと嬉しいです!』。微笑んだロノが説明すると。
ぐーーーきゅるるるる………。
と、誰かのお腹が鳴った。
「おい……バスティン、」
すこし呆れたように彼が後方を見やる。
その視線の先に、もう一人の一階の執事室に住まう執事。
今のロノと同じコック服を身に纏い、
褐返(かちかえし)色に薄緑色の裾カラーの入った髪の両サイドを胸の辺りまで伸ばし、
耳の後ろの髪はふわりと広がって襟足の辺りで切り揃えたロングウルフカットの髪をしている。
その瞳は時折鋭利な光を放つピンクトルマリンで、睨み付けるロノの視線を静かに受け止めていた。
「……あんたがあまりつまみ食いするなって言ったんだろう」
棘を含んだ視線に臆することなく、冷ややかに見返す。
「だからって……少しは我慢しろよ」
「そう言うあんただって、味見と称して何度も食べてただろ」
反撃の一言に、ぴしっと音を立てて、ロノの身体が凍てつく。
けれどすぐに我に返り、バスティンを睨み付けた。
「それを言うなら、お前だって昨日———、」
言い合いがはじまりかけた二人を引き離す、ダークグレーの手袋に包まれた掌。
「あらあら……。おふたりとも、そこまでですよ」
『主様の御前です』。
そう言って、宥めるようにそれぞれの肩に手を置く。
「主様、失礼いたしました」
胸に手をあて謝るベリアン。ばつの悪そうに黙っていたふたりを柔らかくみつめた。