第2章 主人として
「…………。」
「…………………。」
互いに、それ以上紡ぐことはなかった。
ふた組の足音と、生者の証、それぞれの息遣いだけが廊下を支配している。
フルーレの先導で廊下を進みながら、ふと視線を落とし自分の掌を見下ろす。
キラリと陽光を反射し煌めく幽霊石に、波打つ心が解けていく感覚を感じた時。
「主様、ここが食堂です」
彼ととともに足を踏み入れると、焼きたてのパンとスパイスの匂いが鼻腔を擽った。
「おっ! おはよう、主様!」
彼女の姿を見止めた料理の格好をしたロノが、にっと笑みを浮かべた。
金髪に赤紫色の裾カラーと、右の額辺りに稲妻のような黒のメッシュが入った、
つんつんと尖るようなショートウルフカットの髪に快活なアマゾナイトの瞳を持つ青年で、
その右耳には中心に赤紫色の宝石が嵌め込まれた、
シンプルな十字架モチーフのスタッドピアスを付けている。
黒い立襟の胸元に金の釦で留められた黒のネッカチーフと
葡萄(えび)色のリボンが重ねあわされた白のコック服。
両の胸元に金の釦が縦に五つ並び、折り返した七分丈の袖口は黒。
腰には裾に黒のフリルが施された
白と葡萄色のボールドストライプ模様の腰巻きエプロンを付けていた。