第6章 惑いの往く末 前編
けれどその回想のような思考は、叩扉にかき消された。
「主様、起きているか」
声の主はバスティンだった。
少し待って、と声をかけ、一度深呼吸してみずからの思考と表情を切り替える。
「どうぞ」
その声の直後扉がひらく。カツ……と長靴の踵を踏みしめ彼が姿をみせた。
「失礼する」
そう告げ、彼女の部屋へと足を踏み入れてくる。
鉄色のレイヤードカットの髪に淡萌黄(うすもえぎ)色のインナーカラー入りの髪は、
頤の辺りで切りそろえ、顔の両サイドの髪を胸元の辺りまで長く伸ばした髪型をしており、
その瞳は内面の実直さを窺えるようなピンクトルマリンの瞳。
褐返色のシャツに白いネクタイを合わせ、
シャツと同色のジャケットの襟は御召茶(おめしちゃ)色と青磁色のストライプ柄のピークトラベル
(剣襟、ジャケットやコートの襟が上向きに尖っている形を指す)で、
そこには金色のフロッグ留めの釦が縦に三つずつ並んでいる。
灰色のウエストパネルのほどこされたベストの上には黒いハーネスベルトを締め、
ジャケットと同色の脚衣の左太腿と右膝の辺りには、
金色のバングルで留めたガーターストライプを付け、
足元は金色のインソールを持つ黒いエンジニアブーツ風ショートブーツを履いていた。