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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第1章 はじまりの夜


「!」

けれど角を曲がった先は運悪く行き止まりで、彼女は後方を振り仰いだ。



変わらず混濁する沼のような瞳をしたその天使は、

じり、じり、とヴァリスを着実に追い詰めるように飛んでくる。




それはかつて自分に向けられたあの「眼」と重なりあうようで、

染みのように広がる恐怖がヴァリスの内を満たした。



「私を……どうするつもり?」

内心の恐怖を隠して問う。

とん、と壁に背がぶつかり、胸のなかを塗りつぶす絶望。



『死になさい。命のために』

その指が彼女へと伸ばされる光景を濡れた瞳でとらえ、痛みを覚悟してぎゅっと瞳を封じた。



(嫌ッ……誰か………!)
その涙が、指輪へと落ちた時。



眩く、視界を一色に支配するほど強い光が彼女を包み込む。



祖母の腕(かいな)に抱かれているような、温かさを伴って。

と同時に感じたのは、

深い沼に足元からゆっくりと沈み込んでいく如く、重く冷たい眠気。



だんだんと身体から力が抜け落ち、瞼が下がっていく。

ぱたり。みずからが倒れた音が、どこか遠くで聞こえた。
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