第6章 満月の夜
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ソファに腰掛け、五条は天井を見上げた。
胸元には、完全に力を失ってすやすやと寝息を立てている香久夜が収まっている。
彼女の頭を撫でながら、指で軽く毛束を掬う。
「…ったく、先生の唇を噛み切る教え子がどこにいるっての」
五条はそう言って、指先で自分の下唇を触り、薄く残った血の味を感じ、いつもの軽やかな、大人としての余裕に満ちた微笑を唇に浮かべた。
反転術式を少し回せば、傷痕など一瞬で消えてなくなるが、なんだか名残惜しく、五条はそのまま、ひとつ傷を舐めた。
「……ま、よく頑張りました、ってところかな」
香久夜の頬はすっかり正常な体温を取り戻しており、規則正しい寝息に五条は安心した。
ベッドから毛布を引き寄せると、香久夜の華奢な体をすっぽりと包み込み、乱れた髪を愛おしそうに指先で整えてやった。
「誰の記憶を隠してるのか知らないけどさ」
五条は無防備な香久夜の寝顔を見つめ、前髪の隙間から覗く蒼い瞳を、どこまでも甘く細めた。
「こんな顔して僕に抱かれておいて、逃げられると思わないことだね」
その呟きには、大人としての絶対的な自信と、最強の術師としての揺るぎない独占欲が宿っていた。
窓の外では満月がのぞいていた。
けれど、五条悟の腕の中で包まれた香久夜は、もう二度と狂気の夜に脅かされることもなく、朝が来るまで穏やかな深い眠りを続けるのであった。