第1章 4月
サラダを作り唐揚げを揚げたら、残るは味噌汁を温めるだけ。
具を入れた鍋に味噌を溶きながら、ふとリビングを見ると三ツ谷くんの姿が見えなかった。
首をかしげると同時にふわっと三ツ谷くんの香りが鼻をくすぐった。
「う…え?」
「味噌ちゃんととけよ。」
「はいって…えぇ!?」
背中に伝わるぬくもり、身体の動かしにくさ、それらが意味するものは…
三ツ谷くんからのハグ。
そう、つまり、いつの間にか後ろに立つ三ツ谷くんに、おなかに手を回されて後ろからハグされているのだ。
しかも、そのまま味噌を溶けなんて難題まで課してくる。
緊張してそれどころじゃないんですけど!!!!
「あ…のっ、離れてほしいんだけど…。」
「いや、だって、作ってもらうことなんてなかなかねぇから暇なんだよ。」
「でも!近いよ…!?」
「まぁ、男家に上げたのお前だし。これくらいは…なぁ」
なぁって言われても…、私には男心はわかりません。
「千夏、ちゃんと飯食ってんの?」
「やっ…、」
三ツ谷くんの片方の掌が服の上から私のくびれを撫でる。
少しくすぐったくて身を捩ると、三ツ谷くんの顔が私の耳元に寄せられた。
「嫌だったら早く作れば?」
「ん、ねぇ…ってば!」
私の反論には聞く耳を持たず、私の耳にふーっと息をかけて遊び始める三ツ谷くん。
一刻も早くこの状況を打破するために、いつもよりスピーディに味噌汁を作り上げた。
「できた!できたから離して?ごはん運ぶの手伝って!」
「…ちっ…。」
小さい舌打ちと一緒に温もりが離れていく。
盛り付けたものを三ツ谷くんとテーブルに運び、二人で食卓を囲んだ。
自分の家のテーブルを誰かと囲むのは久々で、結構楽しかった。