第2章 柱
「まだ序盤も序盤だぞォ!そんなんで技出せるわけねぇだろ!さっさと立ち上がれェ!」
日夜薬作りに勤しんでいた少女は、今は木刀を手に地面に這いつくばっていた。
朝餉後の腹ごなしに稽古をつけてやると実弥に言われ、用意してくれた道着に身を包み嬉々としてついてきた結果なので仕方がないといえば仕方ないのだが、栄養の足りていない細い体に対する稽古にしては些か厳しすぎるように映る。
「私、諦め悪い方なんです。お薬作るのも何度も試行錯誤してやっと完成するものなので……せめて1太刀くらいは入れされてもらいます!」
しかし当の本人は全くめげておらず、風音とっては厳しくないのかもしれない。
「面白ェ!やれるもんならやってみやがれェ!」
そんな風音の気概が気に入ったのか、実弥は僅かに笑みを浮かべる。
気概に満ちた風音の太刀筋はブレブレで全く定まってはいないものの、昔に父親から手解きを受けていたからか構えはそれなりに整っており、こうして柱相手に果敢にも立ち向かっている。
しかし実力差はそんな些細なことだけで埋まるものではない。
数秒後には風音の手に握られていた木刀は高く宙を舞い、白く細い喉元には実弥の木刀が突き付けられていた。
「言うことあんだろ?」
「ま、参りました……フフッ、ありがとうございました!久々に体を全力で動かせて楽しかったです!」
全身傷だらけの泥だらけ。
後ろで纏められた髪も乱れて、昨日化粧を施していた時とは雲泥の差の様相になったにも関わらず顔は楽しそうな笑みで満たされている。
「……お前変わってんなァ。逃げ出すかもしれねぇって思ってたんだが」
地面に尻もちを着いた風音に手を差し伸べると、キョトンとした表情でその手を遠慮気味に握り返してゆっくり立ち上がった。
「逃げ出す……?そんなこと考え付きませんでした。楽しかったですし、私は……その……」
(逃げ出したとしても行く場所がない……なんて言えない!)
ただでさえ居候の身で負担をかけているのだから後ろ向きな言葉は吐くべきでないと考えた風音は、唇をキュッと引き結んで実弥を見上げる。
「不死川さんのお役に立てるように強くなりたいです!今までの知識も活かして、お薬でもお役に立てるように頑張ります!」