第9章 たまには君から
「はぁ〜〜さすがに疲れたね!」
髪を乾かし終えた彼女が眉を下げて笑う、部屋の中に石鹸の香りがふわりと漂って俺はパソコンの画面を閉じた
「今日はぐっすり眠れそう」
明日筋肉痛になったりして、慣れないヒールで疲れた脚をさすりながら彼女がサイドテーブルの上の水を口に含む
「ああ、ゆっくり休めよ」
ベッドの端に腰掛けた彼女の額に口付ける、気持ち良さそうに細められたその目に疲れが癒されていくのを感じて
一足先に横たわり照明のスイッチへと手を伸ばすと、足元にちょこんと座ったままの彼女が物言いたげに視線をシーツに落とした
「ん、どうした」
「今日は・・、しないのかな、って」
「さすがに疲れたんだろ?」
ぐっすり眠りたいらしいからな、
片目を開け様子を伺うとばつが悪そうに此方を見つめる瞳、飾り気のない素顔は先ほどとは別人のようにあどけない
「もう、どうして今日に限って意地悪なの」
「俺はいつも優しいよ」
「・・綺麗な人と沢山会ってお腹いっぱいなんでしょ」
わかってるんだからね、不貞腐れたようにふくれた顔がぷいと背けられて俺は笑いを堪える
一体何が「わかってる」んだか甚だ疑問だ
「・・みんなひそひそ話してた、」
相澤くんのこと、恨めしそうに俺を睨んだ彼女がぎゅっとシーツを握って
珍しく不機嫌なその表情ににやけそうになるのをじっと堪える
「すごく素敵な人が来てる、って」
「へえ、珍しく妬いてるのか」
「かっこいいのがバレちゃった、嫌だなぁ」
私の旦那さんなのに、徐々に小さくなっていく声に嗜虐心が疼いて、上がってしまいそうな口角を何度も意識的に下げる
長い髪に手を伸ばしくるくると指を絡めると窺うように彼女が視線を上げた
「抱かれたいか」
「そ、そんな直接的なこと言ってな・・っ」
「たまにはお前から」
誘ってくれたらいいんじゃないか、覗き込むように視線を合わせると彼女が紅い顔で口をぱくぱくさせて
思わず吹き出した俺にむっとした様子の彼女がその唇を歪ませた
「もう!私にはできないと思ってるんでしょう、!」
思い切り眉を顰めた彼女の重さが俺の膝にかかる、伸ばされた手がそっと俺の頬に触れて
思わず目を見開いた俺の唇に彼女の指先が触れた