第15章 真夜中の開幕劇
【キバナ目線】
と言えば、最初は変な言動が多くて、突然心臓を押さえるわ、天元突破だなんだ、訳の分からないことを言うわ、ローズさんの所に連れて行った時は喚くわで、変な奴だと思っていた。
引ったくりとのバトルをしていたときは、だいぶ雰囲気が違っていて、本当に同一人物か疑ったくらいだ。
でも次に会った時は、自分にはチャンピオンカップに出る見合った人ではないと、諦めたような、切ないような、なんとも言えない表情をしていた。今思えば、バトルをすることはアイツにとって、本当に悩んでいたのかもしれない。あの動画を見た後でだが、今なら「見合わない」と言った意味が分かる。
きっと必死に逃げてきたに違いない。目立たないように、好きなバトルもせずに、我慢してたに違いない----。
そんなことも知らずに、俺はアイツに八つ当たりした。ずっと俺の前では騒がしくて、いつも嬉しそうに俺を見ていたから、初めて涙を見た時、どうしていいか分からなくなった。
大事な試合前に俺は何してんだって、後悔している。それなのに、アイツは大丈夫だって言って、あの涙を無かったことにした----いや、されたんだ。
バトルをしていても思ったが、は優しい奴だ。それはのポケモンを見ていてもわかる。
そんなやつの涙を、俺はもう見たくねぇんだ。たとえどんな過去がにあっても、俺のバトルで救えなかったとしても…笑っててほしいんだ。
「アイツは強ぇよ。このオレさまのライバルでもあるダンデをギリギリまで追い詰めた奴だぜ!それに、このガラルで他の誰でもない、オレさまを慕ってくれるファンの一人。だったら、オレさまも応えてやらないとな!」
「意味、わかんないんだケド…」
理解できないエメットに対して、キバナはニッと笑ってやった。
「なんなのコイツ…マジで理解できないんだケド」
横にいるネズを見てエメットは言うと、ネズもフッと笑ってやった。
「お前らには理解できないものですよ」
バウタウンまで、あともう少し----。